エネルギー価格急騰でインフレが高進し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に伴うリセッション(景気後退)から経済回復が遅れており、世界経済はスタグフレーションと呼べる深刻な状況です。
スタグフレーションとはどういったものなのか。そしてそのリスクに対して、どのように対処したらいいのか考えてみましょう。
スタグフレーションとは
スタグフレーションとは景気停滞(=給料が上がらない)とインフレが同時に進行する現象のことです。
景気停滞で給料が上がらないにもかかわらず、インフレでモノの値段が上がり続けるので、生活は極めて苦しくなります。
また、将来のための貯金にも影響します。
例えば、子どもの将来のために100万円貯金していても、子どもが実際に学校に通う10年後には学費やその他モノの値段が上がっているため、100万円では足りなくなるなど、貯金は実質的には目減りをしていくことになります。
日本の給与の推移
特に給与が以前より下がり続けているのは先進国で日本だけです。ここから景気停滞するとさらに厳しい状況になりかねません。
日本の経済成長率
給料が下がり続けている要因は、日本経済成長率にあります。日本の経済成長率は「世界最低」でかつ「マイナス成長」となっています。
モノの値段の変化
一方で、身近なモノの値段も過去から上がり続けています。今後も上がり続ける可能性が高く、現在購入できている価格で、10年後、20年後も同額で買えるとは限りません。
インフレによる現金価値の目減り
政府・日銀の政策の中で掲げているものの一つに、「インフレ率(物価上昇率)2%」という目標があります。この「2%」を維持したまま物価上昇が続くと、「現金価値の目減り」はどれほどのものになるのでしょうか。
インフレ影響シミュレーション
例えば、銀行に100万円を預けていて、インフレ率が2%続いた場合、
10年後には実質「約82万円」
20年後には実質「約67.3万円」
の価値になってしまうと試算できます。
スタグフレーションが起こると
- 生活者にとって極めて厳しい経済状況となる
- 将来のための貯金にも影響する
なぜ“スタグフレーション“ が起きているのか?
なぜ、スタグフレーションは起きているのでしょうか?
スタグフレーションは起きている要因
①材料不足・物流遅延・人手不足による“モノの供給不足”
②物価上昇に伴う売上高の鈍化や、輸送・人件コスト・金利増に伴う利益率の悪化による“企業収益の悪化”
ともにコロナの影響が起因で、スタグフレーションは起きています。
どう対処すべきか① - コモディティに投資する -
それではどのように対処すべきなのでしょうか。
過去、1970年代のオイルショック後にもスタグフレーションが起きました。当時の資産のパフォーマンスを見てみると、コモディティ(金や原油)がS&P500(株価指数)を大きく上回る結果となっています。
最近では、通貨価値下落のヘッジ手段として金だけでなく、ビットコインも選ばれています。
インフレ率とGDPの関係
過去のインフレ率(物価上昇率)とGDP(国内総生産)の関係を見てみると、インフレ率が上がる場面ではGDPが下落していることが確認できます。
一般的にはGDPと株価には相関関係があり、GDP成長率が低い場合(=インフレ率が上がる場合)には株価も低調となります。
経済局面別での主要資産のパフォーマンス
過去の経済局面別での主要資産のパフォーマンスを比べてみると、スタグフレーション期では商品(コモディティ)と金のパフォーマンスが良いことがわかります。
コモディティ(金・原油)がスタグフレーション期に強い3つの理由
①価値が目減りしない
②有限なので価値が上がる
③経済危機でも回復が早い
どのように対処すべきか①
- インフレ率が上がる場面では株価も低調となる
- スタグフレーション期ではコモディティと金のパフォーマンスが良い
どう対処すべきか② - 大きな節約をする -
「大きな節約」が必要になる
スタグフレーションは、今の生活が当たり前のものではなくなるため、ちょっとした資産運用や、ちょっとした節約とか、そういうレベルでは足りません。
また、多くの人にとってはがモノの値段が上がって生活が苦しくなるため、投資の余裕がなくなっていきます。
節約、しかも「大きな節約」が必要になります。
✕ 外食などの贅沢を控える(小さい節約)
↓
○ 家賃の安い場所に引っ越す、実家に帰る、お金のかかる趣味をやめる(大きい節約)
お金と幸せについて考え方を変える
今の食べ物、遊び、医療などのレベルは、世界全体の右肩上がりの成長によって維持されたものです。
大きな節約を邪魔するのは、誰もが当たり前だと思っている、いまの生活水準・生活レベルです。
大きな節約をするためには、今の生活や収入に拘る考えを変えて、もっと小さな幸せについて向き合い、お金のかかることを諦めなければなりません。
インフレ率(2%)による生活費への影響
「インフレ率(物価上昇率)2%」で推移した場合、10年後・20年後の生活費をシミュレーションしてみると、毎月の生活費への負担が大きくなってしまうことが予想できます。
上記を見ると、今の暮らしを維持するためには、「最低日常生活費」の場合だと20年後「11万円」、「ゆとりある生活費」の場合だと20年後には「16.8万円」分も上乗せした生活費が必要になるということが分かります。
毎月の負担が大きくなる分、“どう補うか”を考えておく必要があるといえます。そのために、預貯金の一部を“別の価値あるもの”に変えておくことも視野に入れてみましょう。
まとめ
- スタグフレーションが起こると、生活者にとって極めて厳しい経済状況となる
- スタグフレーション期での投資はコモディティと金のパフォーマンスが良い
- 今の生活水準を見直し、大きな節約をする